「振り返れば、
4月から9月までに読んだ本(仕事の本は除く)も
結構な冊数があったので
久しぶりに読書記録を書いていくことにしよう…」と
思いついたが、なかなか取り掛かれなかった
こーでです、こんにちは。
内容をどんどん忘れるお年頃になったのもあり、
量が多いのもあり…
しかし、四の五の言わずに、書いてみましょう。
読んでいる本を区別する気はないのですが、
(逆に言えばどの本もどんどん読み捨てているともいえるかもしれない。)
ある程度のジャンル分けがないと
書きにくい…ということで
今回は海外作家編。
日本語以外で書かれて、翻訳された作品を読んだ記録です。
①銃・病原菌・鉄 一万3000年にわたる人類史の謎 (上下) 著:ジャレド・ダイアモンド 訳:倉骨彰
「どうして世界の富と力は不均衡なのか?」について
進化生物学、生物地理学、文化人類学、言語学などの知見を駆使して
新たな答えを提示して見せた本。
私がこういう少し小難しい文庫を読もうとするときは
気持ちが落ちている時です。
「どうにかしてもう少し賢くなれないものか」と思った時に、こういう本に手を出してしまう。
しかし、そもそも物語を好む私にはこういう事実を積み上げていく本は苦手。
上下巻あるので、ひーひー言いながら、最後まで読んだ。
私が理解できたことは、「食糧生産は大事」ということ。
安定的な食糧生産ができてこそ、社会に余裕ができて、文化が促進されていく(らしい)。
そして、著者の言いたいことを、ものすごくざっくりまとめると
「食糧生産がうまくいくかどうかは地域ガチャによるもので人種によるものではない」
想像以上に、環境の要因が大きいようである。
運命論者になりたいわけではないが、
「どうして、私が、こんなことに??」に対する答えは
やはり、どこか運命論めいているものなのだなと思う。
②侍女の物語 著:マーガレット・アトウッド 訳:斎藤栄治
私はkindleで読んだので、この表紙ではなく、下の表紙だった。
表紙は赤い大理石だと思っていたが、
よくよく見れば、たくさんの赤い花、(チューリップ?)が横倒しに写っているのだった。
一つ目の表紙よりずっとこの作品らしい。
(登場人物の服装に関しては、ドラマ版の写真をイメージして読んでいたので
「白い翼」が文字通り白い翼で描かれていていたので驚いた。)
文句なしの傑作。
抑制的で無駄のない文章だが、
37年前に発表された作品と思えないほどの、新鮮さと勢いがある。
SF、ディストピア小説とされているが
読者がこの作品の世界観を理解していくまではミステリともいえると思う。
あらすじは、(本当は「まぁとにかく読んでくれよ」とだけ言いたい)
とある女性が、アメリカが、キリスト教原理主義者の国に変貌した後、
その新たな階級社会で、侍女オブフレッドとして生きることになるというもの。
キリスト教原理主義者が構築した国のルールや階級、その名前や衣装が
妙に緻密でリアリティがある。
私はキリスト教信者でないが
聖書のフレーズや考えがちりばめられていると思われる。
女性の生き方や社会的地位に
一度でも疑問を持った人なら、
「読みたくない…」「つらい」と思いつつ引き込まれてしまう作品。
私はしばらく、朝から晩まで
この本のことばかり考えていて、
友人から「あんた、ちょっとおかしくなってるわよ」といわれたほど。
それだけの吸引力と圧倒的な世界観がこの本にはある。
③誓願 著:マーガレット・アトウッド 訳:鴻巣友季子
前作から、35年後、2020年に出版された「侍女の物語」の続編。
この表紙も非常に好みである。センスがいい。
こちらも、kindleで読んだ。
そもそもこの二作を
kindleで読んだ理由は、乗っていた電車が立ち往生して
暇だったからなのだが、
どんなにつらい時でも、スマホにマーガレット・アトウッドの作品があるというのは
私にとってお守りにもなっている。
「絶対、負けへんで」という気持ちになる作品だから。
前作、「侍女の物語」は語り手がオブフレッドだけだったが
今作では、3人の女性が語り手となる。
2人は若く、1人は年老いている。
そして、その1人は前作では敵役としてでてきたルディア伯母である。
3人の語り手はそれぞれの地点からスタートし、交錯し
そして、ギレアデ(元アメリカ)の崩壊の兆しへとつながっていく。
私は、ルディア伯母の過去とその心境がつづられる章のみ
何度も読んだ。
高等教育を受け、自由に仕事をしていた女が、
どうやって、男尊女卑がはびこる国になったギレアデ(元アメリカ)で
生き延びてきたのか。
その語りはあまりにも重い。
安易な善悪ではわりきれない世界を突き付けてくる作品。
前作より、結末が安易だという人もいるだろうが、
私にとっては、ルディア伯母の章だけで、大満足だった。
マーガレット・アトウッドは年齢を重ねても、決してひよってはいない。
彼女はまだまだ、闘う気だということがよくわかる作品。
というか、40年近くたったのに、
まだ現実が、
「侍女の物語」になりかねない世の中なので、
マーガレット・アトウッドは危機感を感じているのかもしれない。
そういう現実が、1番、おそろしい。
④ザ・ロード 著:コ―マック・マッカーシー 訳:黒原敏行
相互さんがTwitterで紹介されていたので気になって読んだ小説。
ピュリッツァー賞受賞作。
こちらは、終末的な世界を父子が旅する、暗黒ロードムービー。
時々ものすごく感傷的な風景描写があって、
それが妙に男性的。
寒そうでもあり、埃っぽそうでもあり、湿気てもいそうな世界。
弱く助けるべき子どもは、
実は大人の守り手であり、唯一の希望でもある。
「善き者って?」と尋ねる澄んだ声が耳に残る。
この父子が嬉しそうに果物の缶詰を食べるところが妙に印象に残った。
ポークビーンズとかにも喜ぶんだけど、果物の缶詰についての描写が多い。
シロップ漬けの甘い果物が、大ごちそうなのが、
ひどくマッチョで乱暴な世界と反転した感じで切ない。
ひどく乱暴なシーンがあるのだけれど、
私にはそれらはちっとも恐ろしく感じなかったのも不思議。
その頃、「侍女の物語」「誓願」に取りつかれていた私は、
マーガレット・アトウッドなら、こういう風には書かないのではないか?と思っていたからかも。
じゃあ、どう書くのかといわれたら、わからないのだけれど。
⑤すべての月、すべての年 著:ルシア・ベルリン 訳:岸本佐知子
相変わらず、表紙が写真にされている美女作家ルシア・ベルリン。
前作はこちら。たばこ片手の女優写真…。
この前作「掃除婦のための手引書」はわりとあっさり読めてしまったのだが、
今回の「すべての月、すべての年」は、
とてもよくて一気読みできなかった。
1つ読んでは、しみじみしてしまい、
天井を見上げては、行ったことのない南米や北米の風景を幻視し、
タバコた酒の幻の香りを嗅ぐ。
何が違うのかわからない。
前作の時と自分が変わってしまったからかもしれない。
一日に2~3話読んでは明日の楽しみに取っておくという
速読の私にしては珍しい読み方をした本。
一番好きなお話は最後に収録されている、
「B・Fとわたし」。
この作品が最後でよかった。この並び順は日本語版だけなのだろうか。
どの作品も好きなんだけど、これは終わりに載っていてほしいお話だ、と思う。
過ぎていく日常の、なんてことがないけれど、
とても素敵な話。
友だちみたいな気さくさに、
花火みたいな瞬間の華やかさがあって、
それでもどこか、鳥みたいな高度からのまなざしがあるのが
ルシア・ベルリンの作品。
そうそう、
ルシア・ベルリンはスペイン語が得意だったようで、
さらっとスペイン語が文章に混じるのもチャームポイント。
読書も1つの活動
海外作家編を書いていて
改めて、
母語で、別の国の知る人ぞ知る作家の作品を読める幸せを
思った。
当たり前のようで、当たり前でないことだ。
実は、ちゃんと本を購入して読んでいるのは
そういう文化がなくならないように、
そして
よい翻訳者が素敵な作品を今後も翻訳し
出版していけるようにという願いを込めての
ささやかなアクションである。
翻訳を自分でかける時代はもうそこまで来ていると思うんだけど。
それでも。
そして大量に読んでいるこの本たちは、
いつかは私の身になるのだろうか。
いずれ血となれ、肉となれ。